概要
Overview犬の聴覚は人の3~4倍ともいわれ、また、人よりもずっと広い範囲の周波数の音(人と比較して高周波音域が広い)を聞き分けることができるといわれています。犬たちは、私たちが想像することもできないくらいたくさんの音の中で生活しているといえるかもしれません。
このような犬ですが、先天的に聴覚障害のある犬は、生まれつき音のない世界で生活しているわけですから、犬自身はその不自由さをあまり感じていない可能性もあります。どちらかといえば、一緒に生活していく飼い主さんが、犬とコミュニケーションをとる上での不自由さを感じる場合が多いといえるでしょう。子犬を飼い始めて、「しつけが上手くいかない」、「何度同じことを教えても覚えない」というような場合に、実は耳が聞こえていなかったというケースがあります。
一方で、後天性の聴覚障害の場合、特に急に聴力を失った犬は、今までの音のあふれた世界とは大きく異る、音のない世界に慣れるまでは、戸惑ったり混乱したりしてしまうことがあります。それでも、飼い主さんの温かいサポートがあれば、音がなくても以前と同じように明るく楽しい生活を送れるようになるでしょう。
耳の聞こえない犬であっても、聴覚以外の手段を使って飼い主さんとコミュニケーションをとることは十分可能です。耳が聞こえないからと言ってあきらめないで、犬と積極的にコミュニケーションを取り続けましょう。
※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。
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原因
1.先天性聴覚障害
一般に、音の受容器の発達異常や変性等が原因ですが、その多くは、被毛の色を決定する遺伝子と関連しているといわれています。現在のところ、聴覚障害との関係が指摘されているのは次のような遺伝子です。
・パイボールド遺伝子: 濃い色の下地に白斑が浮き上がる被毛。
(ダルメシアン、ブルテリア、イングリッシュセッター、ブルドッグなど)
・マール遺伝子 : 黒い斑点のある灰青色の被毛。部分脱色遺伝子といわれる。
(コリー、シェルティー、ミニチュアダックスのダップルなど)
2.後天性聴覚障害
後天性の聴覚障害は様々な原因によって起こります。老齢性の聴覚障害は、人と同様に犬でも比較的多く見られます。これは、音波の振動を伝える耳小骨(じしょうこつ)の動きが老化により弱くなるなどの原因によると考えられています。また老齢犬に多い甲状腺機能低下症も聴覚障害の原因となることが知られています。その他、外耳炎、内耳炎や中耳炎等の炎症性疾患、薬(アミノグリコシド系抗生物質等)の副作用、頭部外傷、音を伝える脳神経の異常や脳の腫瘍などが聴覚障害の原因として挙げられます。特発性(原因不明)の聴覚障害もあります。
症状
聴覚が失われていくことは、犬にとってとても不安なことですので、動くのを 嫌がったり、飼い主さんへの依存度が高くなったり、臆病に見える行動をとったりする 傾向がみられます。ただ、片側の耳の聴覚障害の場合は、周囲の人は気が付かないでいることがほとんどです。
聴覚障害の場合は次のような症状がみられます。
・名前を呼んだり、話しかけたりしても反応しない。
・眠っている時に大きな音がしても起きない。
・後ろから近づいたり触ったりすると、とても驚いたり咬みつこうとしたりする。
治療
言葉をしゃべらない犬の聴覚障害を診断するのはとても難しいことです。上述のような症状がみられたり、飼い主さんのお話から聞こえていないことが疑われたりしても、聴力を客観的に評価する検査というのは、一般の動物病院では行うことが難しいのが実情です。
現在犬の聴力を評価する検査としては、脳幹聴覚誘発反応(BAER)検査が行われていますが、現在のところ日本でこの検査のできる施設は数少なく限られています。
この検査では、ヘッドホンなどを用いて様々な大きさの音を犬に聞かせ、その電気反応を記録します。両耳を別々に検査でき、麻酔も必要とせず、子犬でも検査できます。
予防
【「アイコンタクト」が大事】
耳の聞こえない犬でも、眼が見えるのであれば、手話やボディランゲージを使っていろいろなことを伝えることができます。そのために最も大事なことは、「飼い主さんに注目させること」、つまり「アイコンタクト」です。これは耳の聞こえない犬でも「しつけの基本」となるものです。
ただ、耳の聞こえない犬を注目させようとするときには、犬の名前を呼ぶということができないので、初めは手におやつやおもちゃなどを持って誘導し、注目させると良いでしょう。飼い主さんと眼があったら撫でて褒めてあげたり、ご褒美をあげたりすることを根気強く続けます。そのうちに犬は褒めてくれる飼い主さんの手が大好きになり、手にも集中してくれるようになりますから、手話でのコマンド(号令)が伝わりやすくなります。
【「コマンド(号令)」は「手話」で】
手話と言うと大げさなようですが、要は犬と飼い主さんの間でコミュニケーションが取れればよいので、簡単で分かりやすい手の動作をコマンド(号令)として覚えさせると良いでしょう。
たとえば、「お座り」は右手の人差し指を立てる、「待て」は手のひらを犬に向ける、「いけない」は怖い顔をして手でバッテンを作る、などです。コマンド(号令)に上手に従うことができたときには、犬をほめてあげることが大切です。大げさなくらい喜んで身体を撫でてあげたり、手を叩く動作をしてあげたりして、飼い主さんも嬉しいということを犬にしっかり伝えてあげて下さい。耳の聞こえない犬にこのようなコマンド(号令)を覚えさせることは、声などの聴覚情報も使ってしつけることのできる犬に教えることと比べると、大変な根気を要します。でも、犬は自分を守ってくれる飼い主さんに指示され、その指示に従うこと、そして、従ったことを飼い主さんが一緒に喜んでくれることが何より嬉しいはずです。時間はかかるかもしれませんが、根気よく続けることで、飼い主さんとよいコミュニケーションがとれるようになるはずです。
【耳の聞こえない犬に近づくとき】
耳の聞こえない犬にとって、視界に入らない位置から急に人や物やどうぶつなどが近づいてきたり、急に身体に触れられたりというのは、最も恐怖を感じることではないでしょうか。驚いて反射的に咬んだり、怖くて自分を守ろうと攻撃をしてしまったりすることもあります。見えない所から近づくこと以外にも、寝ているとき、排泄時などの犬が無防備な状態にも十分な心配りが必要です。近づくときはなるべく犬から見える位置から近づくようにするか、あるいはベッドを揺らすなど、振動で近づく気配に気が付くようにしてあげると良いでしょう。
【お散歩のとき】
耳が聞こえなくても、眼が見えるのであれば、お散歩は普通にできます。ただし、車や自転車が近づく音などに気がつくことはできません。飼い主さんが犬の耳となって、危険を回避してあげる必要があります。必ずリードをつけて、飼い主さんの隣を歩かせるようにしましょう。「お座り」「待て(止まれ)」などの基本的な手話を用いてのコマンド(号令)に従うことができていると、お散歩もより安全にできるでしょう。
【急に聴覚障害になった場合】
生まれつき耳が聞こえない場合と違って、あるとき急に何らかの原因で耳が聞こえなくなった場合、犬は相当なショックを受け、その不安からパニックを起こしたり精神状態が不安定になったりしてしまうことがあります。普段おとなしい犬でも吠えたり攻撃的になったりすることもあります。たくさんの聴覚情報の中で生活していた 犬たちですから、そのショックも無理はないでしょう。しかし、時間はかかりますが、必ずその状況に慣れてくれるときがくるはずです。飼い主さんは優しく温かく見守ってあげて下さい。急に近づく、急に触るなど、犬が恐怖を感じることを極力避けるようにして、手話やボディランゲージで積極的に犬とコミュニケーションをとるようにしてあげて下さい。初めは理解できなくても、徐々に飼い主さんに見守られ、心が通じていることを、犬は理解するでしょう。犬にとって一番安心できるもの、それは飼い主さんの笑顔です。耳が聞こえなくても、飼い主さんと一緒に、安心して暮らせることが分かれば、犬も徐々に落ち着いてくるはずです。
【老犬の場合】
人と同じで、犬も歳をとると、眼が見えなくなったり耳が聞こえなくなったりという老化現象が見られます。個体差はありますが、犬の場合、一般的に眼(視覚)、耳(聴覚)、鼻(嗅覚)の順に老化していくといわれています。老犬になると若い時のように活発には動かなくなってくるので、かなり視力が落ちるまでそのことに気がつかない場合もあり、「耳が遠くなったな。」と感じたときには、すでに眼もかなり悪くなっていることがあります。また、このような感覚機能に見られる変化と同時に、周囲の出来事にあまり関心を示さなくなったり、痴呆の症状が見られたりすることもあります。このような加齢によるさまざまな変化を抱える犬とのコミュニケーションは難しいように思えますが、老齢になっても、触られたり撫でられたりすると安心する、心地良い、という感覚がなくなることはありません。共にたくさんの思い出を紡いできた大切な犬に、感謝の思いを込めてしてあげられることは、「目や耳が悪くても、安全に安心して暮らせる生活環境を提供してあげること」、「たくさん触れて、撫でて、コミュニケーションをとるようにすること」かもしれません。また、目や耳が悪くなった犬でも、いろいろな刺激を与えてあげることは、気分転換やストレス解消にもなります。体調に問題がなければ外に連れ出して、心地よい風や太陽の温もりなどを肌で感じさせてあげましょう。草花や他の犬の匂いなどをかがせてあげましょう。そして、たくさん優しく言葉をかけてあげましょう。犬の耳という感覚機能ではキャッチできなくても、飼い主さんの優しい言葉に込められた思いは、優しい振動となって犬の心に届くはずです。
「ウチの犬が一番幸せに感じること」って何でしょう?ボール遊びが好きだったり、原っぱを思いっきり駈け回るのが好きだったり、海で泳ぐのが好きだったり、あるいはお昼寝するのが好きだったり、犬によって好きなことは色々あると思います。でも、どの犬にも共通の、一番幸せに感じることは、「飼い主さんとのコミュニケーション」ではないでしょうか。耳が聞こえないというのはとてもかわいそうなことですが、働きかけ方や工夫次第で、「飼い主さんとコミュニケーションをとること」は十分出来るようになります。耳の聞こえない犬のお世話はご苦労が多いとは思いますが、犬が明るく楽しい生活を送れるよう、サポートしていただけたらと思います。"
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