『うさぎが下痢をしている』『うさぎの食欲がない』など普段からわが子の変化にはすぐに気づいてあげたいもの。

下痢や食欲低下など、完全草食動物のうさぎは、常に食べることで消化管を動かし続けています。そのため消化管の異常は体調不良に直結し、早期に治療しないと重篤化してしまうことも多いため、うさぎの消化器症状には注意が必要です。今回はそうした消化器の異常の原因の1つ、大腸菌症についてみていきましょう。

大腸菌症ってどんな病気?

大腸菌症とは、その名の通り「大腸菌(Escherichia coli:E.coli)」が過剰に増殖することによって発症し、全身状態の悪化や下痢を引き起こす疾患です。大腸菌が過剰に増えてしまう原因として、以下のことが挙げられます。

・盲腸における食物繊維不足(繊維20%以下の低繊維食を食べている場合などに起こりやすい)

・長粒子(0.5mm以上)の不消化繊維の不足

・炭水化物が多い食餌による盲腸pH変化(盲腸炎や腸毒素血症などの場合に起こりやすい)

・その他の消化管疾患など

発症年齢は幼齢期(10-14日齢や離乳後数週間)に多いですが、成熟後の大人のうさぎでもみられることがあります。

大腸菌症はどんな症状が出る?

 最もよくみられる症状は下痢です。黄色~茶色の水様性で、しばしば出血をともないます。下痢が続くと食欲低下や脱水症状が生じ、さらに全身状態が悪化します。二次的に腸重積(腸の一部が、腸の中に入り込んでしまい、重なった状態のこと)や直腸脱が引き起こされて、重症化することも少なくありません。特に幼齢期ではまだ十分な体力や免疫力がついていないため、致死率が高い疾患です。

大腸菌症に関連する病気はある?

 原因となる大腸菌は、通常、健康な成熟うさぎの腸からは検出されません。しかし、何らかの原因によって消化器疾患を発症したときに正常な消化管に存在する細菌のバランスが崩れると、日和見菌として急速に増殖することから、正常なうさぎの腸でも少量は常在していると考えられています。

大腸菌症の発症には、元々少量しか常在していない大腸菌の日和見感染が関与しています。そのため、食餌における問題以外に、別の消化器疾患(コクシジウムやその他の病原微生物の感染など)、潜在的なストレス要因などの基礎疾患(根本的な原因)が存在している可能性が高いのです。大腸菌症を治療する際には、このような基礎疾患の診断と治療を進めることも、治療を成功させるうえで欠かせないこととなります。

大腸菌症はどんな治療をするの?

診察されるうさぎ

 下痢などの症状が出ている場合には、積極的な輸液療法・栄養補助・抗生物質の投与を行います。病状によっては入院治療が必要と判断されることもありますが、うさぎが入院できる設備を整えている動物病院は多くないため、あらかじめ病院に確認しておくと良いでしょう。

輸液療法には、通院で実施可能な皮下輸液と入院して実施する静脈輸液があります。皮下輸液は、短時間で栄養補助や抗生物質の投与をある程度行うことができます。どちらが飼い主さんとうさぎにとってベストなのかを相談しながら治療方針を決めていくことになります。

皮下輸液は簡便ですが、治療効果は静脈輸液の方が期待できます。補助的な栄養療法も同様に、自宅で行う場合と院内で行う場合があります。体調不良によって自力で食餌が摂れなくなるとうさぎの消化管運動は一気に低下するため、必要があれば数時間おきに強制給餌をすることもあります。抗生物質の投与も同様です。通院であれば経口投与、皮下投与などが、入院している場合は皮下投与や静脈投与を行うことが一般的です。近年、抗生物質の予防的投与によって、大腸菌の多くの株が耐性菌となっている可能性が指摘されています。耐性化している場合、抗生物質の十分な効果が得られないことがあり、重症化や死亡の原因となることもあります。

大腸菌症の予防法は?

牧草を食べるうさぎ

 適正な食餌管理と繊維を十分に与えることがなにより大切なこととなります。ペレットの与えすぎにも注意ですが、ペレットに含まれる繊維の量も20%以上のものが望ましいと言われています。また、牧草は消化される過程で、長い繊維と短い繊維に分かれ、長い繊維(0.5mm以上の不消化繊維)はお腹を動かし、短い繊維は盲腸で発酵されることで、うさぎの盲腸を発達させることが出来ます。幼齢期は特に食事や環境変化に影響を受けやすいため、お迎え後は静かに見守り、暮らしやすい快適な環境を準備することも重要です。また、基本的に基礎疾患が存在して大腸菌症の発症に至るため、異常がみられたときにすぐに治療を行い、長期化・重症化させなければ死亡リスクを抑えることができると考えられます。

まとめ

 今回はうさぎの大腸菌症についてお話ししました。ペットショップからお迎えした幼齢期の発症が多いとされているので、成熟したうさぎでは比較的少ない疾患かもしれません。しかし、数は少なくとも成熟したうさぎでも発症する可能性があり、ひとたび重症化してしまうと死亡リスクが高い疾患です。軟便や下痢がみられる場合は、様子をみることなくできるだけ早くかかりつけの先生に相談しましょう。対症療法で改善しない場合は、必要な検査によって診断を確定し、積極的に治療するようにしてあげてください。

他の動物と異なり、うさぎにとってお腹をこわしてしまうことはとても大きな問題です。日々の食餌や生活環境を整えつつ、「うんちが柔らかいかな?」「下痢をしている!」と思ったら早めに動物病院を受診するよう心がけましょう。

監修獣医師

浅野 康子

浅野 康子

2010年北里大学獣医学科卒業。卒業後は静岡、大阪の動物病院で小動物臨床に従事。 2014年9月よりアニコムに入社し、犬猫以外のエキゾチックアニマルに興味のある社員メンバーでのチームを結成し、 エキゾの保険開始に関与。現在はうさぎチームとして、相談窓口、情報発信に力を入れている。