犬が病気になったとき、動物病院での治療はもちろん大切ですが、家庭でもしっかりケアをして支えてあげたいですよね。食事や運動などの生活環境も、病気の改善には重要な役割を果たします。
犬の肝臓病の種類や症状、治療法だけでなく、ケアのポイントまで徹底解説します。
1.犬の肝臓の機能について
肝臓は体の中で最も大きな臓器で、胸とお腹を隔てる横隔膜のお腹側に接した位置にあります。心臓から送られてくる血液の約4分の1が肝臓に供給されます。肝臓は総肝管によって胆嚢とつながり、また、胆嚢から十二指腸へは総胆管が伸びています。肝臓で作られた胆汁は、これらの管を通して小腸へ分泌されます。
通常、臓器には動脈と静脈の二種類の血管があり、動脈を入り口として血液が流入します。しかし、肝臓の場合は他の臓器とはちがって、動脈以外にも「門脈」という血液の入り口を持っています。門脈は、脾臓や消化管を経た栄養豊富な静脈血を肝臓に送る働きをしています。
肝臓に送られた静脈血には毒素も含まれていますが、肝臓で化学的な処理をされ、その後胆汁中に排泄されたり、腎臓から尿として排泄されたりします。胆汁の生成や有害物質などの解毒以外にも、糖・蛋白質(タンパク質)・脂質・ホルモンの代謝、血液凝固(=出血を止める)因子の産生やビタミンの合成・貯蔵など、肝臓は非常に重要な役割を担っています。
また、肝臓は再生能力がたいへん高い臓器であるため、「沈黙の臓器」ともいわれ、かなりの傷害を受けてからでなければ症状として表れてきません。
肝臓病は、健康診断の血液検査で偶然に異常が発見されることの多い病気の一つです。
2.犬の代表的な肝臓病
(1)肝障害・肝酵素上昇(臨床症状がない場合を含む)
血液検査全体の結果や症状、画像検査結果と合わせて肝臓病の診断を行います。
若い犬でも健康診断時の採血や手術前の検査などで、偶然に肝酵素の上昇が見つかることがよくあります。症状がないことや、原因がはっきりしないことも多いですが、大きな病気が隠れていないか、悪化傾向にないか注意が必要です。肝酵素の上昇が見つかった場合は、食事療法や内科治療、再検査、エコー等の画像検査の必要性について相談するとよいでしょう。
(2)門脈シャント(門脈-体循環シャント、門脈体循環短絡症、PSS)

食事で摂取した蛋白質は、通常、体内で代謝されその結果アンモニアなどの毒素が作られます。毒素は腸管から吸収され、門脈と呼ばれる血管を通って肝臓に運ばれ無毒化されます。門脈シャントとは、この門脈と全身の静脈の間に余分な血管(シャント血管)が存在することにより、肝臓で無毒化されるべき毒素や有害物質が処理されないまま直接全身を巡ってしまい、さまざまな症状が引き起こされる病気です。
シャントの形成には先天性(生まれつき)と後天性の要因がありますが、犬では多くが先天性とされています。後天性の要因としては、持続的な門脈高血圧症(門脈の血圧が高くなった状態)や重篤な肝炎、肝硬変など肝臓の病気が挙げられます。
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(3)肝炎
肝炎は、肝細胞がさまざまな原因で炎症を起こし、症状を引き起こす病気です。進行経過の状態により急性肝炎と慢性肝炎に分けられます。
犬のアデノウイルス1型などのウイルスやレプトスピラなどの細菌、寄生虫、真菌などの感染、麻酔薬などの薬物や肝毒性のある物質の中毒、打撲や交通事故などによる腹部損傷などが原因として挙げられます。
またベドリントン・テリア、ドーベルマン・ピンシャー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアなどは、慢性肝炎を発症しやすい犬種として知られています。
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(4)肝硬変
慢性的な肝障害が進行して重度な状態に陥り、肝不全症状がでている状態です。壊死してしまった肝細胞が線維化して硬くなることから肝硬変と呼ばれます。
肝性脳症による神経症状や腹水の貯留、黄疸などがでて、低アルブミン血症やビタミンK不足、血が固まりにくくなるなどの重篤な症状も見られます。
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(5)肝臓腫瘍(肝臓癌)
肝細胞癌や胆管癌などの悪性腫瘍があります。肝細胞腺腫や胆管腺腫などの良性の腫瘍もありますが、犬の肝臓腫瘍の場合、良性よりも悪性腫瘍の発生率が高いです。10歳を超えると高リスクとなります。肝細胞癌だった場合、手術を行うと生存期間(余命)の中央値は4年以上となりますが、手術を実施しなかった場合は270日程度と短くなります。腫瘍の位置や全身状態によっては、積極的な手術が推奨されます。
また、結節性過形成と言って、癌ではない良性の結節(できもの)もあります。高齢の犬でエコー検査をすると見つかることが多く、軽度の肝酵素上昇を伴うこともよくあります。この場合は臨床症状が見られることは少なく、寿命や余命に影響する心配はほとんどないでしょう。
できものの有無の確認にはレントゲンやエコー検査などの画像検査が役立ちますが、画像の結果だけでは、癌(悪性)なのか、結節性過形成(良性)なのかは判断できないため、超音波検査等で疑わしいものが見つかった場合の確定診断には、肝臓の組織を採取して行う病理検査が必要となります。
以上のほか、犬の肝臓病には、肝膿瘍や、薬物や毒物による肝障害などもあります。
3.肝臓病の症状・診断・治療について
(1)肝臓病の症状
肝臓病は、初期には特に特徴的な症状が見られない場合が多く、肝臓がかなりの傷害を受けてからでなければ臨床症状が表れない傾向にあります。症状は、原因や病変の程度により異なりますが、一般的には食欲不振や嘔吐、下痢、元気消失、腹部を押すと嫌がる、メレナ(黒色便)などがみられます。重症になると肝性脳症(※1)や黄疸(※2)、腹水、血液凝固異常などがみられ、死に至る場合もあります。
※1.肝性脳症とは、本来肝臓で解毒されるはずのアンモニアやメルカプトン、スカトールなどの体内代謝物や毒性物質によって神経症状が出ることをいいます。嘔吐、よだれ、ふらつき、元気消失、徘徊行動、旋回行動、痙攣発作、昏睡や意識障害などがみられます。
肝性脳症が起きる原因は、肝硬変や重度の肝障害、門脈シャントなどの病気が代表的ですが、便秘によるアンモニア量の増加、高蛋白質の食事、脱水、消化管内の出血なども悪化させる要因となります。
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※2黄疸とは、ビリルビンが血中に増加して、皮膚や眼球結膜などの粘膜が黄色を呈したものをいいます。
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(2)肝臓病の診断
肝臓病と総称される病気にはさまざまな病気があります。そのため、血液検査、尿検査、レントゲンや超音波、CTなどの画像診断を組み合わせて行います。確定診断のためには肝臓の組織を採取して病理検査を行う(肝生検)場合もあります。肝生検には体の外から特殊な針を肝臓に刺して小さく材料を採取する方法と、開腹手術でより大きく材料を採取する方法があります。
(3)肝臓病の治療
原因によって治療が異なるため、原因を追究するとともに治療を行ないます。軽症の場合は、対症療法と食事療法のみで改善することもあります。
内科的には強肝剤や利胆薬(ウルソデオキシコール酸など)の投与、不足しやすいビタミンの補給、下痢をしている場合は下痢止め剤の投与、脱水時には点滴による輸液などを行います。
肝性脳症を起こしている場合には、高アンモニア血症に対してラクツロースを経口投与したり、蛋白質の制限を中心とした栄養管理を行います。
門脈シャントや腫瘍の場合には外科手術が必要となる場合もあります。
4.看護のポイント
(1)散歩・運動制限の必要性について
人間の肝臓病では昔から安静が第一といわれてきました。肝機能の回復には十分な血流で酸素と栄養を肝臓に届けることが大切です。とくに、食後は吸収された栄養素を処理するために肝臓がフルに働かなければならないので、食後の安静は特に重要だといわれています。 一方で、過度の安静による運動不足は体力や筋力の低下を招きます。筋肉は肝臓と同様にアンモニアの処理を行っているため、筋肉量が減少すると高アンモニア血症が悪化する要因となったり、運動不足による肥満から脂肪肝のリスクを高める可能性があります。
急性肝炎や黄疸、腹水、肝性脳症による神経症状があるときや、犬自身が疲れて歩きたがらない場合など、症状が重いときは安静が必要ですが、適度な運動は肝機能の回復に役立つと考えられます。
慢性的な肝臓病で症状が落ち着いている場合には、疲れない程度の軽い運動(ゆっくりとする散歩など)は、体力の維持と気分転換、ストレス解消のためにも良いことです。
ただし、食後30分から1時間くらいは運動を控え、ゆっくり休ませてあげましょう。
どの程度の安静あるいは運動が必要かは、病状によっても変わってきますので、かかりつけの先生とよく相談しましょう。
(2)食事内容・療法食
肝臓は他の臓器に比べて優れた再生能力を持っているので、適切な栄養管理で回復する場合もあります。
肝臓の再生には蛋白質などの栄養が必要なため、軽症~中等症の肝臓病では蛋白質の摂取が推奨されますが、肝不全状態や肝性脳症の症状がある重症の場合は、蛋白質がアンモニア源となって負担となるため、蛋白質の制限が必要なこともあります。
具体的にどのような栄養管理が適切であるかは病態によって異なりますので、主治医の先生と相談しながら、病状に適した食事を選ぶと良いでしょう。
一般的には、十分なカロリーや栄養素が摂取できるように、なるべく消化が良く、嗜好性の高い良質な食事が推奨されます。また、食後の肝臓の負担を減らすために、食事はなるべく1回量を少量で、回数を多く(目安:1日3回から6回程度)与えるようにすると良いでしょう。以下の詳細も参考にしてください。
■蛋白質の質と量に注意する
蛋白質は肝臓の再生に必要な栄養素であるため、肝臓病の犬では、消化性の高い良質な蛋白質を適量摂取することが必要です。
ただし、重度の肝臓病では蛋白質を代謝したときに産生されるアンモニアが解毒できなくなり、肝性脳症など高アンモニア血症のリスクが高くなります。その場合は、蛋白質の摂取を制限する必要があります。
■糖質(炭水化物)は十分に与える
肝臓の再生のため、また蛋白質をエネルギー源として消費することを防ぐため、糖質(炭水化物)は十分量を与えるようにしましょう。糖質(炭水化物)の吸収は消化管から速やかに行われるため、少量ずつ、何回にも分けて与えると良いでしょう。
■脂質が必要な場合と控えたほうがいい場合
肝臓病の回復にはエネルギーを十分にとる必要があるため、脂肪からのエネルギーも犬には大切な栄養です。肝臓疾患がある場合でも適度な量の脂質は必要なので、一日の必要カロリーがしっかりとれるフードを選びましょう。
しかし、一部の肝臓病・胆道系疾患では、脂質を控えたほうがいいこともあります。
高脂血症などの脂質代謝異常や、クッシング症候群などの内分泌疾患、胆汁うっ滞や胆泥症、胆石症などの胆嚢疾患が認められる場合に、血液検査で肝臓の項目に異常が見られることがあります。これらの病気では、脂肪分を制限した食事(低脂肪の療法食など)がすすめられる場合があります。
血液検査で肝臓の数値が軽度に上昇しているけれども、特に症状もなく画像検査で大きな変化が認められない犬では、おやつなどの食習慣や食事内容を見直すだけで数値が改善する場合もあります。脂っぽいジャーキーなどの加工食品は、酸化した脂肪分が肝臓に負担をかけることもあるので、控えるのが望ましいでしょう。
■銅の制限
一部の肝臓病では、食事から吸収された銅が過剰に肝細胞に蓄積して、銅蓄積性肝障害を起こすことがあります。これを防ぐため、肝臓病の犬では銅の摂取を制限されることがあります。また、消化管から血中への銅の吸収を抑えるため、亜鉛を多く含む食事やサプリメントが役立つこともあります。
東洋医学の食養生の考えでは、肝臓病の場合には肝臓(レバー)を食べるとよいという考え方もあります。レバーや貝類には良い栄養もたくさん含まれていますが、銅の含有量も多い特徴があります。肝障害が疑われる場合(とくに、べトリントン・テリアやウエスト・ハイランド・ホワイトテリアなどの銅蓄積性肝障害がみられやすい犬種の場合)、レバーや貝類を与えてもよいか、事前にかかりつけ医にご相談されると安心です。
■抗酸化物質
活性酸素から体を守る働きをもつ抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、カロテノイドなど)は、酸化ストレスを緩和し、肝障害からの回復を助けます。
■ナトリウムの制限
進行した慢性肝炎や肝硬変などに伴って腹水や浮腫(むくみ)の症状がある場合には、ナトリウム(塩分)の制限が必要になります。
■肝臓病用療法食の利用の仕方
犬の肝臓病用の療法食が、さまざまなメーカーから販売されています。メーカーによっても違いはありますが、肝臓病用の療法食の特徴は次の通りです。
①食欲低下に配慮して、少ない食事量でも効率的にエネルギーが摂取できるよう、高エネルギー、高嗜好性に作られている
②肝臓の負担を減らすため、高消化性の蛋白質、炭水化物を使用してる
③高アンモニア血症や肝性脳症に配慮して、蛋白質の量を制限している
④銅、ナトリウムを制限し、亜鉛や抗酸化物質を強化している
進行した重度の肝臓病や、肝性脳症、高アンモニア血症のリスクが高い場合、上記のような肝臓病用の療法食は効果的です。
しかし、「血液検査で肝臓の項目に少し高値があった」というだけの状況であれば、かならずしも肝臓病用の療法食が最適とは限りません。
血液検査で肝臓の数値が上昇しているけれども、特に症状や画像診断等で大きな異常が認められない場合や、食生活の関与が疑われる軽度の肝臓病の場合、高脂血症などの脂質代謝異常や内分泌疾患、胆汁うっ滞や胆泥症、胆石症などの胆嚢疾患が認められる場合などは、肝臓の再生に必要な蛋白質を制限している肝臓病療法食よりも、むしろ脂肪分を制限した低脂肪の療法食が適していることもあります。
療法食を利用する場合には、かかりつけ医とよく相談しながら、わが子の具体的な病状に合った療法食を選択すると安心です。
(3)おやつの量と手作り食に適した食材
おやつやトッピング、手作り食などは、家庭で手軽にはじめやすい食事の工夫のひとつです。しかし、微量元素や必須脂肪酸なども含めた厳密な栄養管理を行おうとすると、完全な手作り食での充足は難しいものです。一日の食事カロリーの90%を総合栄養食(ドライフードや缶詰など)で摂取していれば、残りの10%は手作り食やおやつにしても、栄養学的なアンバランスが問題となることは少ないです。まずは食事全体の1割以内を目安にしてみましょう。
おやつやトッピング、手作り食を毎日の食生活に取り入れる場合は、カロリーを計算して量を決めるとよいですね。
体重2kgで一日200kcalを食べている犬であれば、そのうち20kcalまでが、一日のおやつの上限量の目安となります。普段は市販の総合栄養食にして、週に1~2食は手作り食という方法もいいですね。
肝臓病の食事療法でとくに注目したい栄養は蛋白質と食物繊維です。肝性脳症などの重度な症状がなければ、肝臓の再生に必要な栄養をとる目的で、良質な蛋白質の摂取が推奨されます。食物繊維、とくに水溶性(可溶性)食物繊維は、腸からのアンモニアの吸収をおさえ、肝性脳症の症状緩和に役立ちます。おすすめの食材を以下に紹介します。
■ささみ
低脂肪で蛋白質が豊富なささみは、肝臓病の犬にも嬉しい食材です。(肝性脳症、門脈シャントの場合は蛋白質の制限が必要なので、注意しましょう)。
ささみのカロリーは100gあたり109kcal。ささみ一枚は約40~70gなので約40~70kcalです。体重2㎏の犬であれば、一日あたり一枚の半分程度が適量となります。
鶏肉にはカンピロバクターなど食中毒の原因となる病原体もいるので、かならず中心部まで加熱します。しかし、高温で長時間加熱された蛋白質はメイラード反応により消化性が落ちることもあるので、ジャーキーのように加工したりオーブンなどで高温調理するよりは、ゆでたり焼く方が高消化率をキープできます。
■カッテージチーズ
カッテージチーズのカロリーは100gあたり105kcal。少ない脂質で蛋白質を摂取することができます。投薬の補助にも用いやすく、冷蔵庫から出してすぐに与えられるのがメリットです。
■さつまいも、ジャガイモ
肝性脳症や重度の肝不全の場合、腸からのアンモニア吸収をやわらげるのに、食物繊維が役立ちます。とくに可溶性(水溶性)の食物繊維は腸内細菌のエサとなり、増えた細菌がアンモニアを代謝してくれるので、積極的にとりたいもの。しかし、市販のドッグフードの多くは「粗繊維」として繊維含有量を表示しているため、含まれている可溶性または不溶性の食物繊維の量を把握するのが難しいことも多いです。ぜひ手作り食材から可溶性食物繊維をとりいれましょう。
サツマイモやジャガイモは水溶性の食物繊維を含んでいて、犬も喜んで食べる食材です。蒸したサツマイモのカロリーは100gあたり134kcal、蒸したジャガイモは100gあたり81kcalです。どちらも皮をむいて加熱し、1~2センチ角に切るかつぶしてから与えましょう。ジャガイモの場合は毒のある芽も皮むき時に取り除きます。サツマイモは65℃程度でゆっくり加熱すると甘みが増す特徴があるので、電子レンジなどで急激に加熱するよりは、蒸かすのがおすすめです。
イモ類に含まれるでんぷん質は加熱すると消化されやすくなりますが、冷蔵庫などで冷やしてしまうと消化しにくいβでんぷんへ劣化してしまいます。冷蔵保存したものは加熱して、人肌程度に熱がとれたものを与えましょう。
(4)肝臓病に有効なサプリメント
栄養管理の果たす役割が大きい肝臓病の管理において、必要な栄養素を手軽に摂ることのできるサプリメントは、その効果が大きく期待されています。サプリメントは肝臓病自体を治す薬ではありませんが、肝細胞に対するさまざまな影響や酸化や炎症などによる傷害から肝細胞を保護する役割を期待するものです。現在のところ、肝臓に良いといわれるサプリメントに含まれ、肝臓保護効果が期待される成分には次のようなものがあります。
【S−アデノシルメチオニン(S-adenosyl-L-methionine: SAMe)】
肝臓で働く抗酸化物質の一つであるグルタチオンを増加させたり、胆汁の生成・分泌を促進させる作用などにより、肝臓を保護し肝機能を向上させるといわれ、ヨーロッパでは肝疾患の医薬品として古くから使用されています。日本でも以前は動物用のサプリメントとしてSAMe製剤が利用されていましたが、現在では医薬品指定されているため、サプリメントとしては天然のSAMeを多く含有する酵母などを含む製品が販売されています。
【シリマリン】
シリマリンはマリアアザミという植物に多く含まれる成分で、ヨーロッパでは昔から「肝臓に良い」ということで利用されてきました。抗酸化作用(活性酸素を除去したり、脂質の過酸化を減少させる)や抗炎症作用などにより、肝臓を保護し、傷ついた肝臓の修復を助けるといわれています。
(5)注意したいストレス刺激
ストレスを感じた時に分泌されるホルモンは、血管を収縮させ、血圧を上昇させて肝臓に行く血流を少なくするため、肝臓に負担をかけます。また、強いストレスは、がん細胞や病原体などの異物を攻撃する免疫細胞の一つであるNK (ナチュラルキラー)細胞の活性や免疫力を低下させることがあるといわれています。
犬にとって具体的にストレスとなる要因には、寒冷刺激、環境の変化、運動や遊び・コミュニケーションの不足、恐怖などがあります。 ストレスの原因となるものは犬によってさまざまで、すべてを取り除くのは難しいかもしれませんが、わが子ができるだけリラックスして明るく楽しく生活できる環境を整えてあげることは、肝臓病をケアすることにつながるといえるでしょう。
次のような症状が見られる場合には、肝臓病の悪化も考えられるので、すぐに受診するようにしましょう。
・食欲が落ちて痩せてきた
・元気がない
・下痢や嘔吐がある
・皮膚や白目の部分、歯茎などの粘膜が黄色がかっている、オシッコの色が濃い(黄疸が出ている可能性がある)
・お腹が膨らんできた(腹水がたまっている可能性がある)
・食後にフラフラしたり震えたり痙攣発作を起こしたりする(肝性脳症の可能性がある)
さいごに
肝臓病は症状として表れづらく、気付かないうちに進行してしまう危険があります。状態が落ち着いているように見えても、かかりつけの病院を定期的に受診し、検査を受けて経過を診てもらうことが大切です。
※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
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昨日入院したのですが原因も今の所わからないとの事で、急激な悪化に不安で仕方ありません。この状態はかなり悪い状態でしょうか?命に関わるような状態でしょうか?
わんちゃんが急遽入院されたとのこと、ご心配ですね。肝数値や炎症の数値が上がり、黄疸がみられる場合、肝疾患や胆嚢疾患、血液疾患などの可能性を考ることが多いです。血液検査の数値から、一概に状態を判断することは難しいのですが、病気の原因が判明すると、かかりつけの先生から、治療方法や予後についてなど、もう少し詳しいお話があるかもしれません。無事に回復してくれることを願っております。
低栄養の改善を優先するようにと言われ、フードも好物多めに変えた所食欲も戻ったものの、半月ほどでまた食欲が低下、今度は寝起きにふらついたり、時には倒れてしまう様子が見られ再び受診、血液検査の結果、GOTが338 GPTが356、CRPは変わらず高値、黄疸の数値も悪く、血小板が2.0という先生も驚く低い数値で、そのまま入院になってしまいました。
現在は症状は何もありません、が
肝臓数値(ALT値)がかなり高めです。
エコー、CT検査を長男(ダックス
9歳)と一緒に受けましたが、肝臓や胆嚢などになにか病気は見つかりませんでした。
……そもそも何故数値が高いのか、さらにこの数値を下げるにはどうしたら良いのか、なにか些細なことでも教えていただけると幸いです。
アトピーでアポキル服用ありの子です