我が家のどうぶつの体調が悪いとき、心配でたまらない気持ちになりますね。
どのような症状があるのか、どんな風に痛いのか、言葉を介して伝えてくれないことがもどかしくなってしまいます。
わが子の身体の状態を確認する上で、動物病院で行う検査はたいへん重要です。
それぞれの検査にはどのような特徴があり、どのようなことが分かるのでしょうか。今月は検査についてご案内します。
超音波(エコー)検査ってどんな検査?
人には聞こえない高い周波数(20,000Hz以上)を有する音波である超音波を用いた検査が「超音波検査」です。超音波の伝わる速さは空気、脂肪、肝臓、腎臓、筋肉、骨などによって異なり、超音波がそれぞれの組織を通過する際、超音波の一部が反射してエコー信号というものが生じます。このエコー信号の強さやエコー信号が得られるまでの時間を計算して、その結果を画面上に画像として描出することで体の中の構造を知ることができます。
超音波検査のメリットは、「麻酔を利用しなくても検査が可能なこと」、そして心臓の弁や腹腔内の臓器などの状態を「リアルタイムに観察できること」です。超音波は液体や固体については良く伝導しますので、肝臓、腎臓などの臓器や筋肉、脂肪組織などの描出には優れています。ただし、固体でも金属や骨などの硬い物については反射されてしまい描出が困難です。また、空気も反射してしまいます。したがって、超音波検査では骨や空気の存在は確認できますが、その先や深部にある情報を得ることができません。
【超音波検査の利点・欠点】
超音波検査は肺や脳の観察には向きませんが、腹部にある肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓、腎臓、膀胱、子宮などの臓器、胸部にある心臓などの観察に向いています。特に、動いている物をリアルタイムに描くことができるので心臓の観察に優れています。
レントゲン検査って、どんな検査?
1895年ドイツのヴュルツブルグ大学で、レントゲン博士により発見されたエックス線を利用した検査です。放射線の一つであるエックス線を体に照射し、通過したエックス線量の差を検出器で可視化することにより体の内部を画像化します。エックス線の波長は、きわめて短いので物質を透過する性質がありますが、エックス線が透過する程度は組織により異なるため、身体の部位により透過するエックス線量が変わります。これをフィルム上に反映して身体の内部を写し出すのが、レントゲン検査です。
骨や歯はエックス線を良く吸収するので、写真上では他の体の部位と比べて最も白く見えます。反対に、空気のたくさんあるところでは、エックス線はほとんど素通りしてしまいますので、肺の中や消化管の中は黒く見えます。エックス線造影検査に対して、造影剤を利用しないで行うレントゲン検査を単純レントゲン検査ということもあります。
【エックス線造影検査】
画像にコントラストを付けたり、特定の組織を強調して撮影するために用いられる医薬品のことを造影剤といいます。この造影剤を使用して行うレントゲン検査がエックス線造影検査です。
造影剤の種類はたくさんあり、検査を行う部位によって選択します。エックス線を透過しない性質のバリウムやヨード系の造影剤を用いるのが陽性造影法、エックス線に対して透過性の高い気体を用いた陰性造影法、また、両者を用いるのが二重造影法です。
私たちが良く耳にするエックス線造影検査は「バリウム検査」ではないでしょうか。これは消化器系の検査として行われるもので、造影剤であるバリウムを飲ませてレントゲン検査をします。この検査は、どうぶつでは多くの場合、「異物誤飲の可能性などがあるけど、単純なレントゲン検査では異物の存在が分からない場合」、あるいは「消化管の狭窄などが疑われた場合」などに実施します。消化器系以外では、腎盂(じんう)造影検査や脊髄(せきずい)造影検査など、泌尿器系や脊髄神経組織系でも造影剤を用いた検査を行うことがあります。
【レントゲン検査の利点・欠点】
レントゲン写真では、骨や石は白く、空気は黒く映り、脂肪や筋肉などはその中間の濃さとなって影絵のように映ります。1枚のレントゲン写真で胸腔内や腹腔内を見ることができますので、臓器の位置や大きさなどを確認することができます。また骨の描出に優れていますので、骨折などの診断に有用です。
レントゲン検査は全体的な評価を簡単に、そして便利に行える検査として普及しており、精密検査というよりは、最初に状況を把握したり経過観察を行ったりする際に利用されます。
CT検査って、どんな検査?
CT検査とは、コンピューター断層撮影法(Computed Tomography)の略です。身体にエックス線を照射し、通過したエックス線量の差をデータとして集め、コンピューターで処理することによって身体の内部を画像化する検査です。
CT検査も、レントゲン検査と同様にエックス線を用いた検査ですが、エックス線を発生させる装置と通過したエックス線を受信する装置が検査を受けているどうぶつの周りを 回転しながら撮影しますので、輪切りの画像が得られます。したがって、レントゲン検査が2次元(平面)の画像であるのに対して、CT検査は、断層像として身体の様子を3次元的に撮影することができます。
MRI検査って、どんな検査?
MRI検査とは磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging)の略です。レントゲン検査やCT検査が放射線を使うのに対して、MRIでは磁力線を使って生体の内部の情報を画像にしますので、断層画像という点では一見CT検査と良く似た画像が得られますが、撮像法は全く異なります。
MRI検査の最も大きな特徴は、優れたコントラスト分解能(※)と軟部組織の描出に優れているという点です。獣医領域においては中枢(ちゅうすう)神経系疾患や脊髄疾患の精査を目的として実施されるケースが多くなっています。
※画像診断を行いたい領域に含まれる病変部位などを、画像上の濃淡の差、つまりコントラストとして描出する能力をコントラスト分解能といいます。
【CT検査とMRI検査を比較してみると・・・】
CT検査、MRI検査のどちらも、検査中にどうぶつの身体が動くと上手く撮影ができない ため、検査中は体が動かないように全身麻酔や鎮静が必要ですので、検査の前には麻酔をかけられる状態かどうかを診察していただく必要があります。
また、CT検査やMRI検査といった検査機器を完備している動物病院さんは多くありませんので、場合によっては遠方の二次病院や大学病院などで検査を受ける必要があります。
次にそれぞれの利点と欠点をまとめてみましたが、このような特徴を鑑みながら、疑われる疾患によって検査が選択されます。
※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。
お近くの動物病院をお探しの方はこちら アニコム損保動物病院検索サイト
CT検査 | MRI検査 | |
利点 |
1.MRI検査よりも撮影に要する時間が短い 2.脳出血に対する感度が高い 3.骨の以上の検出に優れている 4.体に金属などが入っていても撮影できる |
1.放射線を使用しないため被爆がない 2.画像のコントラスト分解能がCTよりも高い 3.骨で囲まれた部位(脳底の病変)の抽出がCTよりも優れている |
欠点 |
1.麻酔(全身麻酔、鎮静など)が必要 2.放射線を使用するため放射線に被爆する 3.脳幹付近の診断が難しい |
1.全身麻酔が必要 2.CTよりも撮影に要する時間が長い 3.CT検査よりも費用がかさむ可能性が高い 4.マイクロチップなどの磁気に反応する金属が体内にあると、画像に乱れが生じるので検査できない |