猫の多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)ってどんな病気?嚢胞って何?

概要

Overview

腎臓に多数の嚢胞(液体などがたまった袋状の構造)ができ、腎機能が徐々に低下していく遺伝性の病気が多発性嚢胞腎です。ペルシャ猫や、ペルシャ猫と血縁関係のある猫に多く見られますが、アメリカン・ショートヘアや雑種の猫などでみられることもあります。

多くの場合、3歳から10歳くらいまでの間に腎不全の症状が見られるようになります。

多発性嚢胞腎フローチャート

※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。


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原因

猫の多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)は遺伝性の病気であることがわかっています。腎臓を構成するタンパク質を作る遺伝子の異常により、腎臓に小さな嚢胞ができます。嚢胞は加齢に伴って徐々に数を増やしながら大きくなっていき、その結果、腎臓が腫大し、正常な腎臓の組織が失われていくため、腎機能が低下していきます。

症状

多飲多尿、食欲不振、嘔吐、脱水、貧血といった慢性腎臓病と同様の症状がみられます。多くは3歳から10歳くらいまでの間にこのような症状があらわれます。

一方で、この病気の進行はたいへんゆっくりで、腎機能も徐々に低下していくことにより、体が順応してしまうため、状態が進むまで目立った症状がみられない場合もあります。

治療

残念ながら、今の段階では猫の多発性嚢胞腎を完治させる治療法は見つかっていません。腎機能の低下が見られる猫については、他の原因による多発性腎臓病と同様の治療を行います。内科的治療としては、血液中の老廃物や毒素を体外に排出させることが治療の主体となります。その方法としては、点滴(静脈点滴や皮下点滴など)により体液を増加させ、尿量を増やすことで老廃物の排出を促します。また、腸内で老廃物の原因となるタンパク質を吸着し便として体外に排泄させる活性炭、腎不全を進行させる原因となる食物中のリンを生体内で利用できないようにするリン吸着剤、悪心や嘔吐を防ぐための制酸剤や吐き気止め、腎高血圧をふせぐための降圧剤などの内用薬を投与します。腎臓の負担を減らし、腎不全の進行を遅らせるために、タンパク質、リン、ナトリウムなどを制限した食事療法も行います。

予防

遺伝性の先天的な病気のため、残念ながら予防法はありません。

ペルシャ系やアメリカン・ショートヘアなど、この病気がよく見られる猫種の場合は、幼猫の頃から注意を払い、気になる症状がみられるようであれば早めに受診しましょう。猫の多発性嚢胞腎は常染色体優性遺伝であることがわかっています。

常染色体優性遺伝の疾患の場合、この遺伝子を持っている猫は必ず病気を発症しますので、両親のどちらかがこの病気を持っていると、子どもは50%の確率で発症することになります。この病気の猫を増やさないためにも、この病気を発症した猫を繁殖に使わないこともたいへん重要です。

病気のデータ

Disease data

病気のかかりやすさ(%)

平均年間通院回数
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みなさんからのコメント

Comment
ニクニク小僧
2024-12-26 07:13:55
10歳メスです。多発性嚢胞腎用のウエットやドライフード、今まであげていたドライフードさえも何も食べません。困っています。
まりん
2024-12-22 20:05:47
11歳のメス猫です健康診断で多発性嚢胞腎と言われて肝臓薬を一日2回服用してました1ヶ月弱頃から食欲が落ちて体重も減り検査をしたら糖尿病性ケトアシドーシスでそのまま入院嚢胞腎と糖尿病肝臓薬に関係はあるのでしょうか
アニコム獣医師
2024-12-24 12:09:46
>まりん様
多発性嚢胞腎のねこちゃんに対しては、慢性腎不全と同様の内科的治療を行うことが多いです。また、ねこちゃんの糖尿病は、肥満やストレス、感染症、何らかの併発疾患による高血糖が発症要因の一つです。多発性嚢胞腎や肝臓薬服用と、糖尿病に因果関係があるかは不明ですが、肝臓薬を処方された経緯や、糖尿病の原因について、病名や併発疾患の有無も含めて、かかりつけの先生にご相談いただくことをお勧めします。
もちもち
2024-09-12 08:51:41
10歳の女の子が先日多発性嚢胞腎と診断され、現在ステージ2です。
乳がんの治療を頑張り、2年かけて完治した矢先だったのでショックです。
今後どんなケアが必要になってくるか教えていただけたら幸いです。
アニコム獣医師
2024-09-13 09:46:51
>もちもち様
多発性嚢胞腎が進行すると、慢性腎不全のような状態になります。そのため、腎不全に伴う症状がないかよく観察したり、新鮮な水を常に飲めるようにしていただくと良いでしょう(水飲み場の数を増やすなど)。また、多発性嚢胞腎の悪化要因とされる尿石症や尿路感染症の早期発見のための定期的な尿検査、腎臓病の猫ちゃんに対応した食事の工夫などについても、かかりつけの先生と相談しながらご検討ください。

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